はじめに|2024年12月、雪のつるぎ山へ
2024年12月17日、私は冬のつるぎ山へ向かいました。
目的は、雪を踏み込む音の録音と、山歩きの映像を撮ることでした。
当日の天候は平地では晴れ。しかし、山へ近づくにつれて空は次第に曇り、冬山らしい表情に変わっていきました。
結果から言うと、この日はリフト西島駅までで引き返す判断をしています。
無理に山頂を目指すことはせず、撤退しました。
この記事では、2024年12月時点のつるぎ山の積雪状況と、現地で感じたことを体験記としてまとめます。
登山口から西島駅まで|膝まで埋まる雪
登山ルートは、剱神社 → リフト下のトンネル → 西島駅 です。
登り始めてすぐに感じたのは、雪の量でした。
足を踏み出すたびに、膝がすっぽり埋まるほどの積雪があります。
高度が上がるにつれて雪はさらに増え、体力の消耗も早くなっていきました。
頑張って進み、ようやく到着したのが西島駅です。時刻はすでに13時を回っていました。
西島駅周辺からは、雪をかぶった四国山脈が一望できます。どの山も白く染まり、とても美しい景色でした。
一方で、その景色を見た瞬間、正直な気持ちが湧いてきました。
「……もう無理だ。疲れた。今日はここで帰ろう。」
撤退という判断|冬のつるぎ山では大切な選択

西島駅から山頂方向を見ると、さらに積雪量が増しているのが分かります。
このまま進めば、時間も体力もより消耗し、帰路が厳しくなるのは明らかでした。
冬の山では、引き返す判断も必要です。結果的に、この日は西島駅で撤退することにしました。
この判断は、あとから振り返っても正解だったと感じています。
熊の痕跡は?|冬のつるぎ山で感じた安心感
事前にWebで調べ、つるぎ山周辺に熊が生息していることは把握していました。
ただ、当日現地で熊の足跡・糞・爪痕などの痕跡は一切見ていません。
個体数が少ないと言われている点も、心理的な安心材料でした。
つるぎ山と熊の関係については、こちらの記事でも詳しくまとめています。
それよりも、私が強く不安を感じたのは登山そのものよりも、つるぎ山へ向かう車道の状況です。
国道438号線|本当に怖かったのは車道でした
つるぎ山へ向かう国道438号線は、標高が上がるにつれて急激に雪が増えていきます。
私は念のため、Amazonで購入したタイヤチェーンを車に積んでいました。
実際にチェーンを装着したのは、標高900〜1000m付近の山道です。
人生で初めて、自分でタイヤチェーンを装着しました。
山頂まであと2kmほどの地点では、FF車の後輪が横滑りするほどの積雪があり、タイヤの接地面から車の胴体部分に迫るほど雪が積もっていました。
タイヤ痕に沿って慎重に進めましたが、もし対向車が来ていたら、すれ違いはかなり難しかったと思います。

冬の登山装備|チェーンスパイクは必須
登山では、Amazonで購入したチェーンスパイクを使用しました。
雪に足を取られやすい状況では、チェーンスパイクがあるだけで安心感が大きく違います。
撮影について|本当は「雪を踏み込む音」を残したかった
今回の撮影では、音声面で大きな反省点がありました。
本来、この映像で伝えたかったのは雪を踏み込む音です。
日本の雪質は「JAPOW(ジャパウ)」と呼ばれるほど評価が高いですが、それは北海道や東北だけの話ではありません。
四国のつるぎ山でも、12月にはその感触を確かに体験できます。
しかし今回は、歩行時の振動でバイノーラルマイクのコードが機材に当たり、さらに録音レベル設定が高すぎたことで風音も多く入ってしまいました。
そのため、YouTubeでの通常公開は見送り、限定公開という形にしています。
▶︎ 限定公開の映像はこちら
印象に残った出来事|雪の中を登る野生の鹿
もう一つ印象に残っているのは、車で山道を走行中に見かけた野生の鹿です。
急な勾配を、雪の中でもスイスイと登っていく姿には驚かされました。
一瞬こちらを振り返ったあと、静かに山へ消えていきました。
四国で野生の鹿を見ることはとても珍しい出来事なので、冬の山で見るその姿は、とても印象的でした。

冬のつるぎ山への登山を考えている方へ
冬につるぎ山を登ろうと考えている方へ、私から一つだけお伝えするなら、
「必ず、冬のつるぎ山に登ったことのある人と一緒に行くこと」です。
登山そのものだけでなく、車道、積雪、時間配分、撤退判断――
冬のつるぎ山には、経験がものを言う場面が多くあると思います。
おわりに|撤退は失敗ではありません
2024年12月17日のつるぎ山登山は、山頂に立つことはできませんでした。
しかし、引き返す判断を含めて、この体験はとても価値のあるものだったと感じています。
これから冬のつるぎ山を考えている方にとって、この記録が少しでも参考になれば幸いです。




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